近視・遠視・乱視
屈折異常とは
目の中では角膜と水晶体がカメラのレンズ、網膜がカメラのフィルムの役割をしています。通常、光が入ってくるとレンズを通して網膜にピントが合った絵が映ります。これを正視といいます。屈折異常とは、カメラでいうとピンボケの状態で、いわゆる「近視」、「遠視」、「乱視」のことをいいます。近視、遠視、あるいは乱視があると、網膜にピントを合わせるためには、眼鏡やコンタクトレンズが必要です。
屈折異常の原因
屈折の状態は眼球の大きさや形で決まります。眼球が標準よりも少し小さいと遠視になり、少し大きいと近視になります。その差はミリ単位というわずかなものです。遠視や近視はトレーニングや訓練で治るものではありません。なぜならトレーニングで眼球の大きさが変わることはないからです。子どもの屈折異常は生まれつきのもので、一部の先天異常や遺伝疾患に伴うものを除けばはっきりとした原因はありません。
近視
眼球が大きい(長い)ため、水晶体(レンズ)のピントが網膜より前方に合う状態です。小学校以降に眼鏡が必要になるのは、眼球の拡大(成長)に伴う近視の進行によることがほとんどです。遠くのものは見えにくいですが、近くのものにはピントが合いますので、弱視になるリスクは低いです。
急速に増加している近視
- 小学生の約7割、中学生の約9割が近視
近年、小中学生で視力1.0未満の割合が年々増加していることは 知られていましたが、2019年8月に発表された慶応大学の研究で 「東京都内約1400人の小中学生を調査したところ、小学生の約 76.5%、中学生の94.9%が近視になっていること」が判明しました。
- パソコン・タブレット・スマートフォンの普及で更に加速視
近視の発症には「遺伝的要因」と「環境要因」の両方が関与すると考えられていますが、環境要因として近業作業の増加、屋外作業の減少が報告されています。
特に近年はパソコン・タブレット・スマートフォンなどの長時間使用が悪影響を与えていると考えられており、さまざまな対策の必要性が議論されています。
仮性近視(治る近視)
仮性近視とは
まだ小さいお子さんの場合、うまくピント調整が出来ずに、本当は近視ではないのにあたかも近視かのように指摘される仮性近視の場合が時々あります。
近くの物を見るときには、眼の中のレンズ(水晶体)がふくらんで厚くなります。この調節は、毛様体筋という筋肉が緊張したりゆるんだりしながらレンズのふくらみ具合を調節しています。本を近づけて読みすぎたり、長時間ゲームをしたりするとこの筋肉が縮んだ状態が続き、レンズが薄くならないために遠くが見えにくくなってしまいます。これを調節緊張といい、仮性近視と呼んでいます。
短期の調節緊張による仮性近視であれば、正しい治療と生活習慣の見直しで回復も可能です。小学校低学年の子どもなど、低年齢ほど仮性近視の割合が多いとされており、年齢が上がるにつれて、仮性近視の確率は減っていきます。
仮性近視の検査
仮性近視かどうかを調べる方法は、一時的に調節を取り除いてしまうサイプレジンという点眼を行います。点眼することにより本来の屈折値が分かりますので、その検査で近視が減るお子さんは、点眼治療等を行うことで視力の回復が得られます。就学前や小学校低学年のお子さんに時々見られますが、小学校高学年以降になると本当の近視の割合が多くなっていきます。検査後半日〜数日眩しくなり、ピントがあいにくくなるといった状態になりますので、金曜、土曜日に検査を受けることをお勧めしています。
仮性近視の治療法
仮性近視と診断された場合は点眼治療を行いますが本物の近視に対しては治療効果がないため、基本的に治療を行っておりません。しかし、仮性近視かどうかの検査をご希望されず、とりあえず治療をご希望される方も多くいらっしゃいます。その場合は視力が改善するかどうかは分かりませんので、1、2ヶ月治療を行っても視力の改善が見られないお子さんは、本物の近視になっていると判断し、本人が不自由を感じていれば、眼鏡を作ってあげると良いでしょう。
仮性近視については、専門家の間でも意見が分かれるところで、全く存在しないという医師もいます。しかしながら、調節緊張の目薬で回復するお子さんがいるのは事実で、時に小学校高学年でも仮性近視であることもあります。どちらが正しいというのはありませんので、当院では、上記を踏まえ、検査後必要な方、ご希望がある方などに下記治療を行っております。
- 目薬による治療
- 毎日寝る前に、毛様体筋の緊張をとる目薬(ミドリンM)を点眼します。点眼後30分から1時間で毛様体筋の緊張が取れ、その状態が3~4時間続きます。それを毎日繰り返すことで、毛様体筋が緊張しっぱなしにならないようにします。
学校検診でたくさんのお子さんが受診されます。単に視力を知りたいだけの方、仮性近視かどうかの検査をご希望される方、検査をせずに点眼治療をご希望の方、眼鏡をかけたい方、様々です。子どもの近視に対する考え方は医師も保護者の方も様々ですので、医師と相談の上、方針を決められることをお薦めします。
遠視
眼球が小さいため、水晶体(レンズ)のピントが網膜より後方に合う状態です。軽度の遠視であれば、水晶体の力(調節力)で網膜にピントを合わせることができます。「遠視は遠くが良く見える目」と思われているのはこのためです。しかし強度の遠視では水晶体の力ではカバーができず、近くはもちろん、遠くのものにもピントが合わないため、常にぼけた絵しか映っていません。ですから強い遠視は早く眼鏡をかけないと、視力が弱い「弱視」になるリスクが非常に高くなります。
乱視
角膜や水晶体がゆがんでいるために、光が入る方向でピントが合う場所が異なる状態です。当然、網膜にはきれいな絵は映っていません。強い乱視は弱視の原因となり、早めの眼鏡装用が必要です。
治療方法
これら屈折異常の最も一般的な矯正方法は、眼鏡・コンタクトレンズです。
また、裸眼で見えるようになりたい方にはICL(有水晶体眼内レンズやレーシック治療などがあります。また近視進行抑制の治療として、寝ている間に角膜の形状を変化させて近視を矯正するオルソケラトロジー、近視進行抑制効果のある点眼、マイオピン治療も導入しています。
矯正方法の特徴
長所 | 短所 | |
眼鏡 | 合併症がない | フレームの煩わしさ、強度近視、乱視には像が小さい、ゆがみ、矯正不良など |
コンタクトレンズ | 視界良好 | ドライアイ、アレルギー、まれな感染症などの合併症 |
オルソケラトロジー (自費) |
視界良好、日中裸眼で過ごせる、元に戻せる | 夜間にコンタクト装用、コンタクトレンズと同様の合併症、中止すると元に戻る |
レーシック (自費) |
眼鏡から解放される | 手術であること、まれな合併症がある、強度近視には無理、元には戻せない、高価 |
有水晶体眼内レンズ(ICL) (自費) |
眼鏡から解放される、強度近視にも対応可、レーシックより見え方がよい、摘出が可能であり、元に戻せる | 手術であること、まれな合併症がある、高価後 |